2014/6/20

「JIAゴールデンキューブ賞2013/2014」  楽つみ木エピソード

「JIAゴールデンキューブ賞2013/2014」の組織部門において優秀賞を獲得し、 組織部門の日本推薦作品となった「子どもたちが応援する歴史的建造物の震災復興〜地域・小学校等との協働プロジェクト〜」[建築と子供たちネットワーク仙台]が、 世界各国の優秀作品が集まる「UIA Architecture & Children Golden Cubes Awards 2014」(「UIA建築と子どもゴールデンキューブ賞」)において、見事、最優秀賞(組織部門)を受賞しました。

 <UIA Architecture & Children Golden Cubes Awards>
   ホームページ
   結果(pdf)

JIAゴールデンキューブ賞2013/2014 受賞作品

2014年1月25日開催の審査会において、以下の通り「優秀賞」および「特別賞」を選出しました。なお、審議の過程で一部作品の部門変更をしています。


審査員講評
ゴールデンキューブ賞 総評
審査委員長 芦原太郎
―建築家 日本建築家協会会長 芦原太郎建築事務所

JIAゴールデンキューブ賞の選定を2011年UIA[国際建築家連合]東京大会の機会につづき2014年UIAダーバン大会に向けて継続でき大変嬉しく思っています。 将来の社会にとって極めて大切なことであるにもかかわらず、日本で建築や環境についてあまり理解されていないことは誠に残念な事と言えます。
そもそも「建築」「環境」という言葉は明治の文明開化の時代に西洋の「アーキテクチャー」「エンバイロメント」の訳語として作られた造語であり、その意味するところは解っているようでいて実は極めて曖昧に使われています。
子供に建築や環境について解り易く教えることを機会に、私達大人や専門家も建築や環境について新ためて考え、その大切さを学ぶことが出来るはずです。
子供たちへの教育は「建築」「環境」を肌で感じとり自分との関係に気付いて貰う事が第一歩であり、創造的な関係を創り出す事で自分たちの生活を豊にしていく喜びを体験する事ができれば成功したと言えます。
子供の時代に気づきと成功体験を持ったならばきっと将来は環境を大切にして自分たちの生活を豊かに展開する大人に成長してくれるでしょう。
次世代を担う子供達が建築や環境について学ぶことをこの賞が支援して、少しでも子供たちへの建築教育が広まっていくことになればと期待しています。

●伊東建築塾 『子供建築塾の取り組み』
伊東建築塾はこれからの時代や社会に要請される若くて優れた建築家を育成するため2011年に活動を開始し、その中の小学校高学年の子供を対象とした『子供建築塾の取り組み』がこのたびのゴールデンキューブ賞・特別賞受賞となりました。 この子供建築塾は年間20回もの授業を継続して<いえ>や<まち>をテーマとして系統的に学ぶもので、レクチャーを聞く、建築を実際に見学する、まちを探検する、考え話し合う、模型やプレゼンテーションを作る、発表会をするなど大人顔負けの極めて本格的なカリキュラムです。 広く子供達に建築やまちに興味を持って貰うためのイベントとは違って、建築家候補生の子供たちへの英才教育とも言えそうなものです。
建築やまちも自由な発想で作っていくことができることに気づいた子供達は将来立派な建築家になる事もできるでしょうし、建築家にならなくても自分たちの生活を創造的に展開していく事でしょう。
大変忙しい建築家の伊東氏が積極的に子供建築塾に関わり、賛同する建築家や大学教授、建築学科の学生たちまでもがボランティアベースで活動を継続している点は敬服に値するものです。
今後の活動の展開に期待とエールを込めてゴールデンキューブ賞・特別賞を贈ります。

●生活に生かす住環境学習プログラム 映像教材
エコスクール校舎を持つ小学校を対象として、教員や生徒が上手く使いこなせるように学習プログラムとして開発され、さらに広く一般校舎の小学校においても家庭での実践に繋がるような、環境への配慮や住まい方を学ぶプログラムへ改訂されています。
注目すべきは小学校の学年ごとの正規授業に組み込む事が出来るように作られているところです。
子供達が自然環境や人工環境に気づきその姿を知ることからだんだんにそれらの関係性についても理解を深めることを促すプログラムになっています。
大学の研究者が協力して学習プログラムの開発を継続し、その成果を映像教材として全国に配布されたことは多いに評価できます。
今後、より多くの小学校でこの学習プログラムによる授業が採用されるよう制度的にも働きかけ、建築の専門家や教育者が支援体制を強化されていくことを願って、ゴールデンキューブ賞・特別賞を贈ります。


審査委員 稲葉武司
―建築家 建築と子どもたちネットワーク代表

難しかった今回の審査を振り返ると、優秀賞と特別賞をなんとか決めることができたのは芦原審査委員長の見事な進行と、実行委員会による審査会場の巧みなレイアウトのお陰でした。全部については無理なので、次の三つの作品について感想をのべてみたいと思います。

●学校部門ではNo.16の「エコガイドを育てる環境学習型エコスクール〜校舎を活用した建築教育〜」に票が集まりました。家の改修は子供たちが建築と生活の関係を学ぶ良い機会ですが、学校の改修となると家族単位の住宅とは違い、子供たちの体験は建築空間と公共的な生活の関係に拡張されます。豊田市立土橋小学校では改修の機会を上手にとらえ、工事が終わった後までも地域と連帯しながら持続するプロクラムを作り上げている点が優れていると思います。

●ロスアンゼルス市では、まちづくりをテーマにした学習を全校規模で導入した教育困難校が、成績優秀校に変身した例が報告されています。建築や都市をテーマにした学習は、環境教育の一部ではありますが、肢体不自由児の発育と機能回復、視覚障害児の空間概念の形成と行動訓練、学習障害や自閉症児の空間順応などの面からも考えなくてはなりません。No.12「障害児のためのシェアハウス」は未開拓な領域の貴重な事例だと思いました。

●トラスを利用した建築ワークショップは、建物の強度と力の関係がわかり易いので、世界中で見かけます。その多くは1.2mくらいの木の棒やブラスチックのチューブを利用して会場で完成させる単体のトラス構造物です。No.22「割りばしを使って、建築家とマイハウスをつくろう」でも、建築の自由な発想を形にする手段の一つとしてトラスを利用していますが、材料が日本人なら子供から大人まで手に馴染んでいる箸ですから、家に帰ってからも親子で単体でも複合的な形でも自由に組み合わせて楽しめます。日本的な素材を上手に利用した日本の建築家ならではの工夫といえます。


審査委員 大村 惠
―愛知教育大学教授

子どもを対象とした建築や都市環境の教育活動の審査に関わるのは初めての機会であったが、空間認識と空間創造を目指す建築教育の実践からは多くのことを学ぶことができた。そのいくつかについて記しておきたい。

●震災からの復興のまちづくりを子どもたちとともに取り組むことは、震災で受けた心の傷を癒やすだけでなく、地域の大人たちと子どもたちが結びつき、まちを考え、まちづくりの主体者として、子どもも大人も育っていく取り組みである。今回、そうした実践が数多く寄せられたことは、建築教育の可能性を示しているように思う。組織部門特別賞の陸前高田市子どもまちづくりクラブ「ミニ『あかりの木』プロジェクト」もその一つである。ミニ「あかりの木」を作り、商店街の広場に設置することによって、住民が集まりたくなるような広場を創出する。そこに参加する子どもたちの姿は、非常に魅力的である。

●学校部門の特別賞「伊能忠敬のようなこと」は、今回の応募作品の中で、スケールの大きさが際立っていた。伊能忠敬が用いた測量技術を用いて、伊能の手続きを逆転して地図から地上に地形を描く、伊能らの作業を追体験するワークショップである。ここには、江戸時代に思いを馳せながら、空間を把握し認識しようとする営みがある。圧巻は、グラウンドに描いた巨大地図をはしご車の上から鳥瞰する瞬間であり、子どもたちは、文字通り視点の転換を体感している。

●今回の審査では、応募された部門と異なる部門において評価された活動がいくつかあった。視聴覚作品部門優秀賞の自然環境シリアスゲーム「ぽけっと ねいちゃ〜」(安枝裕司 ひびきのリレーション)もその一つであり、当初、出版物部門に応募されていたものである。本活動は、自然体験活動を補完し自然への理解を深めることを目的としているが、映像表現を用いたシミュレーションプログラムは、環境認識の新しい手法の提案であり、視聴覚作品部門がよりふさわしいと判断されたからである。

教育活動の評価としては、活動に参加した子どもたちの声や姿が大切である。それはポスター1枚から評価することは難しく、実践記録、出版物等の参考資料から読み取ることが多かったことを、付記しておきたい。


審査委員 手塚由比
―建築家 手塚建築研究所

今回初めてゴールデンキューブ賞の審査に参加した。子供達への建築教育活動を評価するこの賞の存在を初めて知ったわけだが、この賞が日本で認知され、子供達への建築教育が日本でも広まっていくことをおおいに期待したいと思っている。

●今回優秀賞になった「子どもたちが応援する歴史的建造物のプロジェクト」は、東日本大震災で被災した歴史的建築物を子ども達とともに復興させるプロジェクトである。具体的には、震災で崩落してしまった堤町まちかど博物館の登り窯を再生させたり、被災した店蔵のファサードの格子壁を子ども達がデザインした紋で飾る活動をしている。しかも登り窯も店蔵も震災前から子ども達がワークショップで定期的に関わって来たもののようである。慣れ親しんできた建築の再建に子供達自身が携わるという体験は何物にも替え難いものであろう。崩れた登り窯のレンガにこびりついた土をはつり、清掃し、型枠を使って積み上げ元の姿に戻すという作業は、関わって初めてその苦労や、面白さのわかるものである。自分の手で実際に触って組み上げることで歴史や建築を肌で感じながら、子供達は様々なことを学ぶであろう。震災復興を建築教育に生かした取り組みとして高く評価したい。

●特別賞になった「KUNDEプロジェクト」は、KUNDEというオリジナルの教育玩具を使って、子供達と家を作るワークショップを展開している。まずそのKUNDEという玩具が良く出来ている。無垢の木を使った柱や梁などの角材を込み栓やジョイントと呼ばれるパーツを使いながら留めて家が作れるようになっているようなのだが、柱梁にもホゾやホゾ穴が仕込んであって、本物さながらに出来ているところが素晴らしい。木造建築の継手や仕口を出来るだけ忠実に再現しながらも子供達にも扱いやすいデザインとなっているのだ。子供達はそのホゾやホゾ穴を見ながら自分の頭でどのように組み立てるかを自分で考えて家を作るという。日本の伝統的木造建築の技術を自分の手を動かすことで学びながら、家を作る体験は子供達の思考力や創造性を刺激する非常に良い体験であると思う。

●「758でまえワークショッパーズ」は、何よりもでまえワークショップというネーミングが良い。小学校の放課後学級で定期的にワークショップを開いているようであるが、小学生にとってはものづくりや空間づくりを学ぶ大変良い機会になっているに違いない。身近な様々な素材を使って比較的大きな空間を構成していて面白そうである。


審査委員 藤井尚子
―名古屋市立大学大学院准教授

 子どもを対象とした賞は、子どもたちに自信を与え、個々の可能性を開く、素晴らしい取り組みである。一方で、こうした子どもを応援する“大人たち”への評価も絡んでくる、やや複雑な入れ子構造ともなっている。とくに、教育活動は、教える側(大人)と教わる側(子ども)の関わりにおいて、見えない力関係を生み出すこともしばしばだ。今回の応募案のなかにも、見えない力関係において予定調和的な活動となってしまっている事例も少なからず見受けられた。しかし、なかには、その大人の思惑を逸脱し、軽々と飛び越えていく子どもたちの自由な創造性に目を奪われた。

●そのひとつが、出版物部門優秀賞に選出された「楽つみ木広場」(木楽舎 つみ木研究所)の活動であった。
乳幼児向け玩具である積み木は、その単純さから、世界中で愛されるものである。フランク・ロイド・ライトも、幼少時の原体験として積み木遊びに言及するように、子どもが構造物を学ぶ教材としては、新奇性は薄いといえよう。選考時にも「カプラ」との類似が議論となったのもその点にある。だが、VHSに映し出された子どもたちの光景は、そんな議論を軽やかに超越していた。動物になりきった女の子が、積み木の一片を口にくわえ、いかにも誇らしげに友達にプレゼントする。友達は、それを受け取り、自分の世界に一つ加える。…そこには、大人の考える教材としての積み木とは異なる、子どもの考える新たな積み木の姿があった。それは、大人が企図したものを超えた、子どもの能動的で創造的な発明であり、私は、大人には考えつかない世界のはじまりを見たきがした。子どもたちの持つ自由な創造性と想像力こそ、次代の世界の原動力になると。




クリックすると元のサイズで表示します
0



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ